新電力(PPS)って何?

電力の自由化に伴って「新電力(PPS)」という言葉がマスコミなどで頻繁に登場するようになりました。「新電力って、そもそもどんな電力会社?」といった疑問が、一般消費者の間からよく聞かれます。新電力という言葉が、新聞などで登場するようになったのは、2016年4月からの小売電力の全面自由化が間近に迫ってきたためです。PPSは(Power Producer and Supplier)略称です。

近年は顧客争奪が激しく、かつてのプロパンガス業界と同様に複数回の供給事業者変更が多くみられます。

 

 

2000年から部分的に自由化がスタート

当初は電力規模2000kW以上の「特別高圧電力」を使用する大規模工場などの需要家を対象に、次いで50kWkW以上の「高圧電力」の需要家、つまり、中小工場やホテル、病院、大型スーパーなどを対象に自由化が実施されました。

これらのいわゆる大口需要家は、東京電力や関西電力などの地域電力会社以外からも、自由に電力を買うことができるのです。新電力という名称は、地域電力会社と区別するするためにつけられた名称で、正式には、特定規模電気事業者(PPS)と呼ばれます

 

  契約の種類 受電電圧 電力自由化された時期
特別高圧 20,000V 以上 電力自由化(2000年4月~)
高圧
(業務用電力・高圧電力・産業用電力)
6,000V 以上 電力自由化(2004年4月~)
低圧・家庭 100V ~ 200V 電力自由化(2016年4月~)

業務用電力・高圧電力・産業用電力のお客様が新電力(PPS・特定規模電気事業者)の対象。(6,000V受電であれば、契約電力が50kW未満のお客様も対応いたします。)
低圧電力・家庭用電力は新電力(PPS・特定規模電気事業者)の対象。

特定高圧(20,000V以上)および高圧(6,000V以上)で受電するお客様が新電力(PPS・特定規模電気事業者)の対象となっています。
2016年4月より、一般家庭を含む低圧のお客様にも新電力(PPS・特定規模電気事業者)の販売の対象となっております。

 

PPSの乱立

部分自由化の範囲が広がるのにつれて参入してきたのが、この新電力という電気事業者です。新電力の参入数は、このところ急増しています。部分自由化の実施当初は、20社(経産省への届け出数)にも満たなかったのですが、2011年の東日本大震災後の電力需給ひっ迫により、一気に増大し、2013年には100社を突破、2015年4月末現在で何と650社あまりに達しています。
とくにここ1、2年の目覚しい増大ぶりは、家庭やコンビニ、小規模事業所などの低圧部門すなわち小口電力需要家すべてが2016年の自由化の対象になったためです。いわば小売電力自由化が総仕上げの段階に入ったわけで、小売電力の「全面自由化」と呼ばれる理由なのです。こうした小売電力の全面自由化で開放される国内の電力ビジネス市場の規模は、7兆5000億円の規模に膨れ上がるといわれており、そうした巨大電力市場をねらって新電力の参入が急増しているのです。

PPSの電力供給

このように2016年の自由化後、新電力会社も、地域電力会社と競争することになりますが、現在、経産省に届出を行っている新電力は、地域電力会社に比べると、当然に規模も小さく、備えている電源(発電所)も多くはありません。

発電設備を持たないPPSもチラホラ

鉄鋼、化学、石油など、自社の工場で使うための発電設備を保有しているところや、再生可能エネルギー発電事業者などもありますが、電機メーカー、住宅、商社、情報、通信会社など、電源を持たないさまざまな業種の企業の参入が見られます。
自社で電源を保有しない事業者は、電源を保有する地域電力会社、他の新電力などから電力の供給を受けて小売り事業を展開するところも多いようです。つまり電気の卸売です。そうした新電力は、どうやって規模の大きい地域電力会社と価格競争するのでしょうか?

卸電力取引所からの購入で設備投資を軽減

発電設備を持たない新電力が安い電気を提供する方法としては、いくつか考えられています。ひとつは、工場などの余剰電力を調達する方法です。新電力の中には自家発電設備の有効活用として、自社以外の需要家にも電気を販売しているところもありますがそれと同様に、発電設備を持っている事業者から、価格の安い余剰電力を購入する方法があります。

PPSの低コスト体質が基本料金値引きの原資

新電力が価格の安い電力を供給できる方法として、基本料金を大幅に引き下げられるという点があります。通常、電気料金の体系は基本料金、従量料金、燃料費調整の3つから構成されています。このうち、燃料費調整や従量料金は、発電に伴うコストであり、地域電力会社と大きな違いがありません。差異が出てくるのは、基本料金です。基本料金は、設備コストや人件費に伴うもので、広い地域に多くの顧客・発電設備を抱えている地域電力会社はそれに見合う料金設定をせざるを得ません。
それに対して新電力の場合、会社の規模と人件費のバランスが取りやすく、また設備コストはゼロかあるいは非常に小さいものとなります。そのため、基本料金の部分で、安い料金設定により、地域電力会社と十分太刀打ちできるようになります。